欲は便器の彼方に

本日は記事内容が汚いのでご注意ください。
先日、古本を購入した。
産まれる前に出版されたもので初版本。
著者から某氏に献本されたようで
自筆で宛名が書かれた名刺様の紙がちょこんとのり付けされていた。
大して有名でない著者の本ではあるが、まぁ自筆だしいずれ微妙な値段が付くかも
なんて淡い期待を持ちつつ本を開く度に、
おぉ産まれる前に書かれた文字だ、なんて一人にんまりしていた。


週末のこと。
その本を机の上に置いていた、私が間違っていた。
娘の手にはそれがあった。
娘は乱雑にそれを振り回す。
一通り振り回して飽きると件の名刺様の宛名書きに娘の手は延びた。
次の瞬間、音も無くそれは剥がれ本と宛名書きは
積年の蜜月関係を崩され別離の時を迎えていた。
一瞬のことだった。
私は少しショックを受けた。
しかし、またのり付けすりゃあ良いと思い直し
娘の手からそれらを取り上げた。


そして、昨晩のこと。
便意を催した私はトイレに例の本を持って入った。
あっさりと排泄を終えた私は余韻に浸りながら、
本をランダムに読み続けていた。
その時。
ひとひらの白いものが舞落ちた。
ひらひらと舞うとスゥーッと私の股間と便座の隙間を通り抜けていった。
なんだ、今のは?
私は娘に剥がされた宛名書きを適当に挟んでいたのをすっかり失念していた。
しばしの沈黙の後、それを思い出した私は慌てて白い紙を取り…出せなかった。
白い紙は見事に私の汚物に突き刺さっていたのだ。
うわ。
一瞬私は考えた。
これはまた貼れるのか?拭けば貼れるか?
安全地帯を持ち、それを救出した私からすぐに迷いは消えた。
これは、もう貼れない。
その後は丁重にトイレットペーパーにお包みしてゴミ箱に捨てる事にした。


本には何かが剥がされた痕だけが残っている。