瞬間コメばらまかれて

炒め物してたら米をね、ばらまかれました。
妻はまだ帰宅せず、娘と炒め物と私。米櫃をね、移動していなかった僕も悪いですけどね。
口頭注意にも娘は素知らぬ顔。
炒め物をしている身では手も離せない。
片付けるよう言うと小さな箒をもってきまして。
あぁ、僕は終わったと思いました。
このクソ箒はここにはいない妻のその同僚がどこかの民芸品とか言って土産として買ってきたものの、一向に役に立たないゴミみたいな存在でして、もっと早く捨てておけばよかったのに人様からのお土産だしと甘い気持ちで放っておいたのが仇になり、今ここでこのように娘の手の中にあるのです。
「それだけはやめろぉ〜、やめてくれぇ」怒りと悲しみと哀願とが混じった声で僕は娘に訴えました。
娘はちらりと僕を見ると俯き、半笑いで(なんと笑いやがったのです)米を箒で掃きはじめたのです。米は台所中、冷蔵庫の下へまで散らばっていきました。パラパラパラーっと軽快な音を立てて。
木曜日という疲れがピークに達する日の晩にこのような仕打ち、我が子とはいえ許すまじ。
押し入れに娘を放り込み、娘の大きな泣き声を聞きながら独り途方に暮れたのでありました。
途方に暮れる時間もあまりないので、ご近所さんにはご迷惑ですがコメを回収するのを諦め、掃除機にて吸い取っているとタイミング良く妻から電話が。プチッとね、いっちゃいますよね。貴様だけが忙しいと思うな、俺は厳しい時間制限の中でやっとるんじゃ、ワレ!?と切れていると、押し入れから出てきた娘が見てまして。まぁヒいてること、ドンビキです。しまいにゃシクシク泣き出しまして。あぁ、僕はこんなんじゃいけないな、と思いビールを取り出しグビッとやってから娘に静かに説教垂れて、ご飯を食べましたとさ。
怒ると余計疲れてドツボにはまるだけなのに、粛々と家事をこなせば大して疲れないのに。それが分かっていても余裕がないと頭にきてしまうのです。人間としてまだまだ…と思いつつも木曜は厳しいぜ。